婦人科子宮頚部細胞診 第3章
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–70–8.子宮頸部の免疫染色(CINtec® PLUS)図1 細胞周期がG1期からS期に進行図2 RBとE7の結合もE2F放出に働き、細胞周期回転に作用図3 上皮細胞はp16(茶色に染色)陽性であるが、 Ki-67陰性図4 p16(茶色に染色)陽性、Ki-67(赤く核に陽性)を示す細胞群 宿主細胞に感染したHPVの産生するE7タンパク質は宿主細胞の細胞周期調節タンパク質であるRBに結合し、その機能抑制や分解に働く。RBはもともと転写調節因子のE2Fに結合しており、Cyclin D/CDK4の働きによりRBがリン酸化されE2Fが放出されることにより細胞周期がG1期からS期に進行する(図1)。RBとE7の結合もE2F放出に働き、細胞周期回転に作用する(図2)。p16はCDK4インヒビターでありもともとCyclin D/CDK4に結合することにより、RBリン酸化やE2F放出を抑える効果がある。HPV持続感染細胞ではp16の高発現が維持されていることが認められる。p16発現を認めるのに細胞が細胞周期に入って増殖傾向にある場合は、腫瘍性変化(HSIL以上)と考えることができる。 よって、G0以外の全ての細胞周期の核内タンパク質であるKi-67免疫染色を細胞周期のマーカーとしてp16免疫染色と2重染色を行うことで、子宮頸部細胞をp16 (+)&Ki-67 (-): 反応性変化(図3)、p16 (+)&Ki-67 (+): 腫瘍性変化(図4)と判断できる。子宮頸癌のほとんどはHPV感染に起因すると考えられている。その詳細なメカニズムは完全に解決されたとは言い難いが、おおまかな発症過程は次の通りである。

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